こんにちは。公認会計士の檜垣です。
皆さんは経営計画、立ててますでしょうか。
私の感覚でしかないのですが、半数近い企業では経営計画、あるいは「経営計画」とまでは言わないものの、売上目標などの何らかの数値目標を掲げているといった感じです。
しかし、さらにこんな質問をしてみたらどうでしょうか。
・経営計画(あるいは数値目標)が実際の経営でプラスの効果をもたらしていますか?
・経営計画は根拠ある数値になっていますか?
・常日頃目標数値を気にすることはありますか?
会社の将来像は明確ですか?
私もよくこのような問いかけをしてみるのですが、多くの企業ではこの問いに対して「Yes」が帰ってくることはありません。
世の中これだけ多くの会計事務所や書籍で「経営計画を立てましょう!」「経営計画は大事です!」と言っているのに、多くの企業でそれほど経営計画の存在感を感じられていないのはどうしてでしょうか。
それは、経営計画は手段でしかないということを理解しないまま計画作りだけを行っているからではないでしょうか。つまり、経営計画を作るという「手段」は講じているものの、経営計画を作る「意味」もしくは「理由」を理解していない結果、「数値計画はつくったけど、だから何?」という状態に陥っているのを非常によく見かけます。
そこで、今日は、なぜ経営計画を作るのか、その意味が理解できれば経営計画の作り方はもちろん、どのように利用すればいいのか、その生かし方も見えてくるのではないかと思うのでそんな話をしたいと思います。
(1)どのような経営計画を作ればいいのか
@超大作を作らない
経営計画を作るためにいわゆる財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)をちゃんと作ろうとするあまり、経営計画を作ることにエネルギーを使い果たしてしまっていませんでしょうか。計画を立てることは大事ですが、その計画を立てるために長い時間を使ってしまったり、作っただけで疲弊してしまっては計画を立てることが目的化してしまいます。計画立案時に大切にする発想。それは、「脱!完璧主義」です。ザックリでいいので、サッサと作ってすぐに実行に移す!これがポイントです。
A根拠ある数値目標
よく経営計画の議論で「根拠ある数値」ということが求められます。過去の話であれば、「根拠」って明確にできますが、将来の話である経営計画に「根拠」っていったい何だ!と言いたくなりますよね。ここでいう根拠の意味、これはほとんどの書籍で紹介されていないので、ここでお伝えしたいと思います。それは、その目標を達成しなければならない「資金的な理由」です。さらにもう一つ付け加えるとすれば、「その数字を達成するための行動計画を伴っている」ことです。
よくありがちな経営計画の立案方法は前年比何パーセントアップという「過去対比」型の立案方法です。この方法で作られた経営計画には、「数字の根拠」はありません。なぜなら、その何パーセントアップというのは「これぐらいならできそうかなぁ」という期待以上のものはないからです。経営計画に必要な要素は、あと何年でこのビジョンを達成するためには、少なくとも今期は数値的にここまで到達しなければならないという明確な達成理由です。それが今よりかなり背伸びしなければ達成できないものだとしたら、経費を見直したり、粗利率を上げるための行動を見直したり、売上を上げるために客数を増やすには、売値を上げるには、リピートを増やすにはという行動計画まで落とし込んでいく必要があるのです。それでもなお、達成が困難と思われるような強烈な目標にならざるを得ないのであれば、そもそものビジョンの達成時期から考え直さなければならないかもしれません。
そのような明確な資金的な達成理由を伴った経営計画を作るには、「必要資金」からスタートして「必要利益」そして「必要売上」へと発想を広げる必要があります。
ちなみに、根拠なき目標を作ってしまった場合の弊害は、簡単に下方修正してしまうだけでなく、何とか社長が社員を鼓舞しようにも、そもそもその数字を作った理由が「なんとなく1割アップ」とかからスタートしているわけですから、社員に熱いものが伝わらないのは当然です。どうしても達成しなければならない理由が資金的に説明できる場合と、パッションでしか説明できない場合とどちらの方が相手にズシット伝わるか、考えてみれば明らかですね。
Bそもそもビジョンは明確であるか
ここまで経営計画の話をしてきましたが、一番重要なのは実はここです。そもそも会社のビジョンは明確化できているでしょうか。ビジョンとはこれから目指していく企業の理想の状態です。根拠、すなわち「達成しなければならない資金的理由」もそれを実現する「行動計画」もすべては「5年後、10年後には会社はこうなっている」というビジョンがあってこそのものです。将来のビジョンを聞かれて「う〜ん。それを今考えているところなんだよ」という方も少なからずおられると思いますが、それを省略して「とりあえずもっと売上を伸ばそう!」と社員に訴えたところで、社員には響きにくいですよね。例えば10年後、どのような商品を扱っていますか?売上はどのくらいですか?どこで商売していますか?値段はいくらですか?お客さんはどんな人ですか?社員は何人でどんな人が集まっていますか?借入金はどのぐらいまで減っていますか?手元資金はいくらぐらいですか?社長さんはどんな生活をし、社員の生活水準はどのような程度ですか?その時の経営方針はどうなっていそうですか?どんな営業をしていますか?こんな問いを一つ一つ埋めていって、当社の理想状態をしっかりと作り上げ、それを社員と共有し、その上で社員に「これを実現するために、今期はこういうことをここまで努力しよう」という場合と、「昨年より10%ぐらいアップできなくて悔しくないのか!」と発破をかけるのとどちらの方が社員を鼓舞できるでしょうか。
(2)経営計画を立てる意味とは
結局経営計画はビジョンを達成するために必要だということです。「こうなりたいなぁ」と思うことは多々あると思うのですが、そのために具体的に今日、何をしましたか?その結果は事前期待に照らして満足いくものでしたか?もし今日の行動結果が事前期待に満たないものであった場合、今度どう行動を修正していきますか?そして明日以降、何をすればその「こうなりたい」に近づけますか?そして、その「こうなりたい」を実現するために今年いくらお金を稼ぐ必要があるのでしょうか。経営計画は社長様のビジョンを数字と具体的な行動に落とし込み、日々の活動を目の前の「受注に応じる」ことから「ビジョン達成のために必要な行動」に変化させ、目標と行動を管理することに意味があります
(3)経営計画を作るのは難しそうだ
ここまでお話しして、「なんだか経営計画って難しそうだなぁ」と感じられた方も多いのではないでしょうか。しかし、そうではありません。確かに、まだビジョンが定まっていないという段階であれば、まずはそこからということになりますが、ビジョンが定まっていさえすれば、あとは結構簡単です。当会計事務所ではザックリではありますが、楽に早く当期の経営計画を策定し、行動計画に落とし込むためのコンサルティングをしております。
使用する道具はA4サイズの紙数枚A3用紙一枚のみです。いわゆる財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)など小難しいものは使いません。
実際、会計に関する知識の全くない社長様からも「これは分かりやすい」とお褒めの言葉をいただいております。