当会計事務所では、先週公表された平成30年税制改正大綱の解説を行ってまいります。今週は、まずはダイジェストで全体のだいたいの感じをお伝えします。当然、この後、各テーマごとに内容を深めて参ります。
【事業承継税制の特例の創設】
1.制度の概要
先代から贈与又は相続もしくは遺贈により取得した、すべての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、後継者の死亡の日まで納税を猶予する。
2.後継者の要件の概要
代表権を持った後継者(同族関係者で過半数の議決権を持っている場合に限る)であって、同族関係者中で最大株主であること。
3.対象法人の要件
特例承継計画を都道府県に提出し、認定を受けた会社。特例承認計画の作成には認定経営革新等支援機関の関与が必要。
4.従来の事業承継税制の不安なポイントへの対応
@雇用確保要件を満たせないとアウトなのか?
当該要件を満たせなかったことについて認定経営革新等支援機関の意見が書かれた理由書を提出すればOK。
AM&Aや解散をしたらアウトなのか?
経営状態が悪い場合に、M&Aや解散をした場合に相当の税額を免除してくれる救済措置あり。
5.適用期間
平成30年1月1日から平成39年12月31日まで
【一般社団法人に関する課税強化】
1.制度の概要
特定の一般社団法人の役員が死亡した場合に一定の金額を当該一般社団法人が遺贈により取得したものとみなして、当該一般社団法人に対して相続税を課税する。
2.特定の一般社団法人とは
次のいずれかの一般社団法人
@役員の1/2超が同族関係者で占められている法人
A相続開始前5年以内に同族関係者が1/2超の役員を構成していた期間の合計が3年以上ある。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後
【小規模宅地等課税価格特例の縮減】
1.特定居住用宅地等の特例の縮減
持ち家に居住していない者に係る対象者の範囲から下記を除外。
@相続開始前3年以内に、その者の3親等内親族が所有する家屋に居住したことがある者
A相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
2.貸付事業用宅地等の特例の縮減
相続開始前3年以内に貸し付け事業のように供された宅地を除外。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から
【給与所得控除額の改正】
1.改正の概要
@控除額を一律10万円引き下げる。
A給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
2.改正後の給与所得控除額
【公的年金等控除額の改正】
1.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
{(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除 40万円
(ロ) 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入額)
360万円以下の部分 25%
360万円超720万円以下の部分 15%
720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
65歳未満 60万円
65歳以上 110万円
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
{(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除 30万円
(ロ) 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入金額)
360万円以下の部分 25%
360万円超720万円以下の部分 15%
720万円超959万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
65歳未満 50万円
65歳以上 100万円
3.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
{(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除 20万円
(ロ) 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入金額)
360万円以下の部分 25%
360万円超720万円以下の部分 15%
720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
65歳未満 40万円
65歳以上 90万円
【基礎控除の改正】
改正後の基礎控除の金額
@合計所得金額が2,400万円以下
・・・48万円
A合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下
・・・32万円
B合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下
・・・16万円
C2,500万円超
・・・基礎控除の適用なし。
【青色申告特別控除の改正】
1.電子帳簿保存、E-taxを利用していない青色申告者(所得税)
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除を55万円とする。
2.その他の青色申告者(所得税)
次のいずれかの要件を満たすものの青色申告特別控除を65万円とする。
@仕訳帳及び総勘定元帳の保存について電子帳簿保存制度を利用する。
A確定申告書、貸借対照表及び損益計算書をE-taxで申告する。
適用開始時期について
給与所得控除額の改正、公的年金等控除額の改正、基礎控除の改正、青色申告特別控除の改正は平成32年分以後の所得税について適用されます。
【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者以外)】
1.概要
次のいずれも満たす場合には、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。この場合に、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%の税額控除ができるものとする。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること。
A国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで。
【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者)】
1.概要
平均給与等支給額の前年からの増加割合が1.5%以上である場合、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。
この場合において
次の要件を満たすときは、給与等支給増加額の25%の税額控除ができる。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与支給額の前年からの増加割合が2.5%以上である。
A次のいずれかの要件を満たすこと。
イ 教育訓練費の額の前年からの増加割合が10%以上である。
ロ 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明されたこと。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで
【償却資産税の軽減措置】
1.軽減のための要件概要
生産性向上の実現のための臨時措置法の制定を前提に、
@市町村の導入促進基本計画に適合すること。
A労働生産性を年平均3%以上向上させること。
を内容として認定を受けた先端設備等導入計画に記載された一定の機械・装置等で、生産、販売活動に直接使われるもの。
2.適用期間
生産性向上の実現のための臨時措置法の施行の日から平成33年3月31日までの間に取得されたもの。
3.現行制度の廃止
現行の、中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づく償却資産税の軽減措置は、適用期限をもって廃止する。
ニュースリリース
衝撃の減税、ついに来た無念の増税~平成30年税制改正ダイジェスト〜
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