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こんにちは。公認会計士・税理士の檜垣です。
今日は、今回の税制改正の資産課税における最大の目玉である「事業承継税制の特例」について紹介します。

(1)事業承継税制とは
事業承継税制そのものは、以前から存在しており、次世代経営者に自社株式を贈与、相続により引き継ぐにあたり、多額の贈与税、相続税の発生が障害となり、事業承継を妨げているとして、このような時に発生する贈与税、相続税の一部の納税を猶予(免除ではない!)するための制度として始まりました。
しかし、適用要件があまりにも複雑多岐にわたり、尚且つ、要件を満たさなくなった場合に、一括で支払いを求められることとなるなど、納税者にとって魅力的な制度ではなかったため、普及しないまま今日を迎えております
国としては、現時点で127万社にもわたる中小企業が事業承継の受け手となる次期経営者が決まっていないという状況を憂慮し、何とかしてこの事業承継税制をより使いやすいものにしようとしてできたのが、今回の事業承継税制の特例です。
これまで、税務実務の現場で事業承継税制を納税者が敬遠してきた理由として私が最も多いと考えているのは、「所詮、納税猶予に過ぎない」というところです。納税者が真に求めているのは、「納税時期」の緩和ではなく、「納税額」の緩和であり、下記で述べるように、仮に贈与、相続された株式に係る贈与税、相続税の全額を納税猶予したとしても、それは単に「納税時期」を緩和したに過ぎず、節税効果はゼロです
納税者が求めるものは、「節税」にあることからすると、ニーズに対してピントのずれた特例ができたという感はぬぐえません。従って、この特例をみんながこぞって使いだすとは、正直、到底思えないのですが、今回政府がかなり力を入れて出してきた特例ですので、今日はご紹介したいと思います。ただ、今回のテーマは、そもそも事業承継税制を知らないという方にはちょっとハードルが高いかと思います。詳しくは、当会計事務所のセミナー「春のお金の勉強会」で詳しく解説することとしますので、今回は「従来の事業承継税制はある程度知っている前提」でお話しします。

(2)特例の概ねの内容
この特例の特筆すべき特徴は下記は一文に尽きます。
『特例後継者(※1)が、特例認定承継会社の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈により当該特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等までその納税を猶予する。』
(※1)特例後継者
分かりやすく言うと下記の条件を全て満たしている人です。
@当該非上場会社の代表権を持つ後継者
Aこの後継者が一族で当該非上場会社の総議決権数の過半数を有していること
B一族のうちで最大株主であること
(※2)特例認定承継会社
下記の条件を全て満たす会社です。
@平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に「特例承継計画」を都道府県に提出した会社
A「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項」の認定を受けた会社

(3)この特例を利用するには、「特例承継計画」の作成が必要
この特例を使うには、「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出する必要があります。詳細は未だ公表されておりませんが、当該会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものであると考えられます。そして、大きな特徴は、この特例承継計画の策定には「認定経営革新等支援機関」の指導及び助言を受けたものである必要があるという条件が付されている点です。尚、当会計事務所は「認定経営革新等支援機関」の認定を受けております

(4)「特例」が従来の事業承継税制より優れている点
@納税猶予を受けられる範囲
(原則)自社株式の2割部分に係る贈与税、相続税だけを納付し、8割部分は猶予される。
(特例)自社株式に係る贈与税、相続税の全額が猶予される。
A雇用確保要件の大幅に緩和
(原則)贈与、相続から5年間は平均して当初の8割以上の雇用を確保する必要あり。もし、雇用を確保できない場合は、納税猶予が外れてしまい、納付を迫られる
(特例)雇用確保要件を満たさない場合でも、納税猶予が外れることはない。但し、そのためには、雇用確保要件を満たせない理由を記載した書面を都道府県に提出することが必要。
B「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」
これまでの事業承継税制にも贈与、相続から5年を経過した後の破産やM&Aに対しては、納税猶予を納税免除としていました。しかし、その要件もとてもハードルの高いものでした。今回の特例の創設では、特例承継期間経過後(贈与、相続から5年経過後)の「経営活況の変化を示す一定の要件を満たす場合」(結構要件が緩い!)に、非上場会社の株式を譲渡するとき、合併するとき、解散するときには、次の通り納税猶予額を免除することとなりました。下記はとてもややこしい表現なのですが、わかりやすく言うと、業況が悪化した場合、一般的には株価は下落していきますが、このような状況で株式の譲渡や合併、解散を行う場合、その下がった株価で贈与税、相続税を再計算し、小さくなった金額を納付するという形のものです
(イ)『譲渡もしくは合併の対価の額(譲渡又は合併時の相続税評価額の50%に相当する金額を下限とする)又は解散時の株式の相続税評価額を基礎に再計算した贈与税額等』+『譲渡等の前5年以内に後継者とその一族に支払われた配当と過大役員給与』の合計額を納付することとし、当該合計額が当初の納税猶予額を下回る場合は、その差額を免除する。
(ロ)譲渡又は合併の対価の額が当該譲渡又は合併時の相続税評価額の50%を下回る場合で担保を提供した場合は、上記(イ)で算出した納付額について一旦猶予した上で、さらに下記(ハ)の免除を受けることができる。
(ハ)譲渡又は合併後2年を経過した段階で、当該会社又は合併存続会社の事業が継続しており、かつ、従業員の半数以上の雇用が維持されているときは、実際の譲渡又は合併対価の額で計算した贈与税額等と直近5年以内の配当と過大役員給与の額の合計額を納付することとし、その金額が(イ)で計算した納付額を下回る場合には、その差額は免除する。
そして、もう一つ、「経営環境の悪化を示す一定の要件」も注目すべき点です。
・直前の事業年度終了の日以前3年間のうち3年以上、赤字である。
・直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、売上高が前年対比で減少している。
・直前事業年度終了の日における有利子負債が6か月分の売上に相当する額以上である。
・当該会社の属する業種に係る上場会社の株価(直前事業年度終了の日以前1年間の平均)が、その前年1年間の平均より下落している。
・後継者が経営を継続しない特段の理由がある場合
C後継者が元代表者以外の者から贈与等により取得する非上場株式についても特例承継期間内(5年以内)のものについては、納税猶予の特例の適用対象とすることができる。

(5)適用開始時期
平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用することとされています。

皆さん、明けましておめでとうございます。
公認会計士・税理士檜垣孝司です。
本日より、平成30年税制改正に関連した解説を順次掲載してまいります。
まず最初は、「特定の一般社団法人等に対する相続税の課税」についてお伝えしたいと思います。

(1)一般社団法人とは
いきなりこのタイトルを見せられても、まず、「一般社団法人て何だ・・・?」という方もいらっしゃるかと思うので、少しだけ、一般社団法人のお話をしたいと思います。
一般社団法人を一言でいうと、「持分のない株式会社」です。これでもまだ全然わからないと思うので、「持分がない」をもう少し掘り下げたいと思います。

(2)持分がないとは
通常、株式会社の貸借対照表の純資産には「資本金」という項目があり、この資本金に対応する株式が発行されています。株式会社では、各株主が持ち株割合に応じて株式会社の資産・負債(すなわち純資産)に対する支配権を持っており、これを一般に持分と呼んでいます。一般社団法人には、「資本金」がなく、その当然の帰結として、株式もありません。そうなると当然、「持分もない」ということになります。そのため、一般社団法人では、株式会社のように、たくさん株を持っている人が大きな支配権を持つということはなく、株主総会に相当する「社員総会」という会議体においても、一人当たり一議決権を持つことになり、単純な多数決で物事を決めていきます。

(3)一般社団法人は非営利事業しかできないのでは・・・?
株式会社というと、普通の営利目的の事業をやっているイメージを誰でも抱くでしょう。しかし、一般社団法人というと、「営利事業はできない」とか、「利益を出しちゃいけないんでしょ?」という方がいらっしゃいます。そんなことはありません。一般社団法人には事業内容の制限も、所得制限もありません。株式会社でやっているような事業を一般社団法人で行うことも、何ら違法性はないのです。

(4)持分がないとどういう利点があるのか
持分、つまり株式と言い換えてもいいでしょう。株式がないと何がいいのかというと、相続税対策において無類の強さを発揮します。通常、株式会社であれば、株式があり、事業がうまくいって内部留保が大きければ大きいほど、非上場株式であっても相当の株価が付きます。そして、その株式は当然株主に相続が発生した際には、相続財産を構成するのです。しかし、一般社団法人には、株式がない。確かに、株主に相当する「社員」という人たちはいるものの、株式という財産はなく、社員としての地位も一身専属。つまり、社員の地位は相続対象ではありません。そうなると、一般社団法人にどれほどの内部留保があろうとも、社員死亡時に「株式に相続税がかかる」ということはないのです。この特徴をうまく利用すると、特定の一族が代々一般社団法人の代表を務め続けた場合、事実上、その法人の財産を相続で受け継いでいるにもかかわらず、その財産を入れた器が一般社団法人であれば一切相続税がかからないという状況が発生します。もしも、株式会社であれば、相当高額な相続税が株式にかかるような場合であっても、一般社団法人を使うと、衝撃的な相続税の節税効果があるのです。

(5)平成30年税制改正の概要今回の改正の概要は次の通りです。
『特定一般社団法人(※1)の役員(理事に限る)(※2)である者が死亡した場合には、当該特定一般社団法人が、当該特定一般社団法人の純資産をその死亡時における同族役員(※3)(被相続人含む)の数で除して計算した金額に相当する金額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人に相続税を課税する。』
(※1)特定一般社団法人
次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人をいう。
@相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること
A相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること
(※2)相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人の役員であった者を含む
(※3)同族役員とは
一般社団法人の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等以内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう。

(6)適用開始はいつからか
当該改正は平成30年4月1日以後の一般社団法人の役員の死亡に係る相続税について適用されます。但し、その前に設立された一般社団法人については平成33年4月1日以後の役員の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は上記(※1)Aの2分の1を超える期間に該当しないものとされています。

当会計事務所では、先週公表された平成30年税制改正大綱の解説を行ってまいります。今週は、まずはダイジェストで全体のだいたいの感じをお伝えします。当然、この後、各テーマごとに内容を深めて参ります。

【事業承継税制の特例の創設】
1.制度の概要
先代から贈与又は相続もしくは遺贈により取得した、すべての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、後継者の死亡の日まで納税を猶予する。
2.後継者の要件の概要
代表権を持った後継者(同族関係者で過半数の議決権を持っている場合に限る)であって、同族関係者中で最大株主であること。
3.対象法人の要件
特例承継計画を都道府県に提出し、認定を受けた会社。特例承認計画の作成には認定経営革新等支援機関の関与が必要。
4.従来の事業承継税制の不安なポイントへの対応
 @雇用確保要件を満たせないとアウトなのか?
当該要件を満たせなかったことについて認定経営革新等支援機関の意見が書かれた理由書を提出すればOK。
 AM&Aや解散をしたらアウトなのか?
経営状態が悪い場合に、M&Aや解散をした場合に相当の税額を免除してくれる救済措置あり。
5.適用期間
平成30年1月1日から平成39年12月31日まで

【一般社団法人に関する課税強化】
1.制度の概要
特定の一般社団法人の役員が死亡した場合に一定の金額を当該一般社団法人が遺贈により取得したものとみなして、当該一般社団法人に対して相続税を課税する。
2.特定の一般社団法人とは
次のいずれかの一般社団法人
@役員の1/2超が同族関係者で占められている法人
A相続開始前5年以内に同族関係者が1/2超の役員を構成していた期間の合計が3年以上ある。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後

【小規模宅地等課税価格特例の縮減】
1.特定居住用宅地等の特例の縮減
持ち家に居住していない者に係る対象者の範囲から下記を除外。
@相続開始前3年以内に、その者の3親等内親族が所有する家屋に居住したことがある者
A相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
2.貸付事業用宅地等の特例の縮減
相続開始前3年以内に貸し付け事業のように供された宅地を除外。
3.適用開始時期
平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から

【給与所得控除額の改正】
1.改正の概要
@控除額を一律10万円引き下げる。
A給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
2.改正後の給与所得控除額
改正後の給与所得控除額

【公的年金等控除額の改正】
1.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除 40万円
(ロ) 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入額)
360万円以下の部分        25%
360万円超720万円以下の部分 15%
720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
     65歳未満   60万円
     65歳以上  110万円
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除    30万円
(ロ) 定率控除 
    (50万円控除後の公的年金等の収入金額)
    360万円以下の部分        25%
    360万円超720万円以下の部分 15%
    720万円超959万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
    65歳未満   50万円
    65歳以上  100万円
3.公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円超2,000万円以下である場合の公的年金等控除額。
 {(イ)+(ロ)}と(ハ)のいずれか大きい額。
(イ) 定額控除    20万円
(ロ) 定率控除
    (50万円控除後の公的年金等の収入金額)
    360万円以下の部分        25%
    360万円超720万円以下の部分 15%
    720万円超950万円以下の部分 5%
(ハ) 最低保障額
    65歳未満     40万円
    65歳以上     90万円

【基礎控除の改正】
改正後の基礎控除の金額
@合計所得金額が2,400万円以下
  ・・・48万円
A合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下
  ・・・32万円
B合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下
  ・・・16万円
C2,500万円超
  ・・・基礎控除の適用なし。

【青色申告特別控除の改正】
1.電子帳簿保存、E-taxを利用していない青色申告者(所得税)
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除を55万円とする。
2.その他の青色申告者(所得税)
次のいずれかの要件を満たすものの青色申告特別控除を65万円とする。
@仕訳帳及び総勘定元帳の保存について電子帳簿保存制度を利用する。
A確定申告書、貸借対照表及び損益計算書をE-taxで申告する。
適用開始時期について
給与所得控除額の改正、公的年金等控除額の改正、基礎控除の改正、青色申告特別控除の改正は平成32年分以後の所得税について適用されます。

【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者以外)】
1.概要
次のいずれも満たす場合には、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。この場合に、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%の税額控除ができるものとする。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること。
A国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで。

【所得拡大促進税制の拡充(中小企業者)】
1.概要
平均給与等支給額の前年からの増加割合が1.5%以上である場合、給与等支給増加額の15%の税額控除ができる。
この場合において
次の要件を満たすときは、給与等支給増加額の25%の税額控除ができる。但し、控除税額は当期の法人税額の20%を上限とする。
@平均給与支給額の前年からの増加割合が2.5%以上である。
A次のいずれかの要件を満たすこと。
 イ 教育訓練費の額の前年からの増加割合が10%以上である。
 ロ 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明されたこと。
2.適用期間
平成30年4月1日から平成33年3月31日まで

【償却資産税の軽減措置】
1.軽減のための要件概要
生産性向上の実現のための臨時措置法の制定を前提に、
@市町村の導入促進基本計画に適合すること。
A労働生産性を年平均3%以上向上させること。
を内容として認定を受けた先端設備等導入計画に記載された一定の機械・装置等で、生産、販売活動に直接使われるもの。
2.適用期間
生産性向上の実現のための臨時措置法の施行の日から平成33年3月31日までの間に取得されたもの。
3.現行制度の廃止
現行の、中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づく償却資産税の軽減措置は、適用期限をもって廃止する。

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日時:2018年2月3日(土)午前10時〜12時
場所:檜垣会計事務所 会議室
   大阪市浪速区元町1丁目10番6号 堤ビル3階
   
参加費用:無料
持ち物:特にありません。
定員:先着3名様まで
お申込み方法
下記のURLからお申込みフォームに入力いただき、送信ください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/e4dfd1ea547317

以上です。

毎年やってくる所得税、法人税の申告・・・。何とか税金安くならないのか?と嘆きたくなります。そこで、多くの事業者が所得税、法人税の節税を考えますし、税理士も所得税、法人税の節税をテーマにした勉強会をよく開催しています。そこで、前回12月号では、「法人税節税着眼点モデル」というものを示しました。
お読みいただいた方の中で、比較的会計・税務に詳しい方はきっとこのように感じたのではないでしょうか。
「これ、効果が出るのは1回だけじゃないの?」
こう思った方、お見事!!その通りです。
前回の「法人税節税着眼点モデル」は、資産をより小さく計上し、負債をよりたくさん計上するというのが基本的考え方だったのですが、それをやっても効果は1回っきりです。もっというなら、着眼点モデルに従って、ある年の税金を限りなく小さくしたら、翌年以降、リバウンドで今度は多めに税金がきます。
えッ?どういうこと?という方、安心してください、細かいからくりは理解できてなくて大丈夫です。次の結論だけ知っておいてください。
「所得税、法人税の世界では、ある年の税金を抑えれば、翌年以降の税金が上がり、通算すると節税効果は消滅する仕組みになっている」
ということです。
「へぇ〜、そうなんだ。」というぐらいで結構です。
要するにお伝えしたいことは、
「所得税、法人税に本来の意味での節税はない。あるのは、税金の先送りだけである」
ということです。
では、「もう税金からは逃れられないのか!?」というと、そうではありません。所得税とか法人税という税目だけで多額の節税を目指すことが誤っているだけで、他の税目では大きな節税を達成することができます。下の図を見て下さい。

上図のように、現役世代の間は、所得税、法人税に頭を悩ませます。しかし、既に述べたように、所得税・法人税は税金の先送り策はあっても、税金を減額することは難しいものです。それに対し、贈与税、譲渡所得税、相続税には、様々な非課税制度、単純な税金の先送りではない税額軽減措置がある他、計画的な生前贈与により、低い贈与税率で長期間にわたり次世代に贈与すれば、相当の税金の減額効果が得られます。
法人税の先送り対策は盛んにやっているものの、相続税対策はまだ未着手の方がいらっしゃった場合、そのままでは、折角の法人税の方での頑張りが、相続税で水の泡・・・ということもあり得ます。ぜひ、計画的な資産対策を心がけていただきたいと思います。

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